

Coffee, community, and consistency.
東京ロースタリーのオープンから約12年にわたり、オールプレス・ジャパンのヘッドロースターとしてその役割を担ってきたペター。清澄白河で過ごしてきた時間や、毎日のようにコーヒーを焙煎し続けることへの想い、そして2026年秋に予定している東京ロースタリーの移転について話を聞きました。
まずは自己紹介と、オールプレスで働くことになった経緯を教えて。
僕はペター。今はオールプレス・ジャパンでヘッドロースターをやっていて、ここで働き始めて12年になるよ。日本に来る前はロンドンに住んでいて、ロンドンのオールプレスのホールセールパートナーのカフェで働いてたんだ。そういう意味では、もう16年近く、いや16年以上もオールプレス・ファミリーの一員ってことになるね。
ロンドンで働いていたカフェの最終日にたまたまオールプレスのCEOに会ったことが、オールプレス・ジャパンで働くきっかけになったんだ。僕が日本に来たばかりのとき彼はちょうど各地を旅行をしていたみたいで、僕が日本に着いたのと全く同じタイミングで日本に来てたんだよ。だから、ロンドン最後の日に彼に会って、それから日本でも会って……。ここに引き寄せられる運命だったんじゃないかって感じがしたんだ。
ペターは東京ロースタリーがオープンしたときから働いていたの?
ほぼそうと言えるかな。ここがオープンしてから2〜3週間後くらいに働き始めたから、正確に東京ロースタリーがいつオープンしたのかは実はちょっとあやふやなんだけど、オープン直後、ほんの数週間後には働いていたよ。
一番最初に焙煎したときのことや、初めて焙煎機を使ったときのことは覚えてる?
僕は最初はバリスタとして働いていたんだ。だから働き始めてからの半年間は、カフェでフルタイムで勤務していて、それから徐々にロースタリーのポジションに移っていったんだよ。そう、僕の経験はすべて、ここで学んで培ったんだ。


これまでを振り返ってみて、オールプレスをこんなに特別なブランドにしている理由って何だと思う?
大きく分けて2つのことがあると思う。ひとつはシンプルさ。オールプレスは複雑で難しいレシピにこだわって、バタバタするようなことはしない。誰でもこのコーヒーを美味しく淹れられる。そういう考え方を大切にしているんだ。
そして2つ目は、これが多分一番大きな理由なんだけど、やっぱり人。ここで働くチームも、ホールセールのパートナーも、みんながつながってる。僕がロンドンにいた頃、オールプレスは他のコーヒーショップと全然違ってた。初めてオールプレスのロースタリーに足を踏み入れたとき、みんな楽しそうで、すごくフレンドリーだったのが印象的だったんだ。当時のロンドンにそんな場所はなかったからね。
12年前に僕が日本に来たのは、ちょうどスペシャルティコーヒーのムーブメントが始まって、サードウェーブコーヒーがトレンドになりかけていた頃だった。そのときもオールプレスは日本の他のコーヒーショップとちょっと違ってたと思うんだよね。フレンドリーだし、すごく親しみやすいんだ。この品種がどうだとか、そういう細かい話ばかりじゃなくて、もちろん知識はあるし、求められたらすぐに伝えることはできるんだけど、いつだって一番大切なのはコーヒーの風味なんだ。
シンプルで、そして美味しいこと。この2つが僕たちのすべての土台になっているんだよ。
ペターはオールプレスのヘッドロースターであると同時に自分のカフェも運営しているけど、オールプレスで働きながら、自然とカフェを始めたいと思うようになったの?
僕もまさか自分がカフェを持って、またバリスタとしてコーヒーを淹れるなんて思ってもみなかったんだ。焙煎は楽しい反面、かなり体力を使うし、孤独な作業でもあるんだよね。焙煎機と自分だけが同じ空間にいて、ずっとそこにこもるわけだから。だから、なんというか、また人と関わりたいなって思い始めて。やっぱり僕は人と関わる時間が好きなんだ。
いつも思うんだけど、コーヒーの焙煎は僕が昔やってた写真の仕事とすごく似ていて、そっくり置き換えられる気がする。たとえばファッション撮影は、バリスタの仕事にそっくり。スキルが必要なのはもちろんだけど、フォトグラファーがモデルとコミュニケーションをとるのと同じように、カフェではバリスタがお客さんとコミュニケーションをとる。一方で、焙煎はひたすら同じことの繰り返しだから、スタジオでの商品撮影にすごく似てる。細かいところまでこだわって、修正を繰り返す、みたいなね。
焙煎してるときは基本的に人と関わる時間は少ないけど、僕はどっちも好きだし、両方やりたいんだ。だから、自分のビジネスをやりながらも、オールプレスでこうして焙煎をさせてもらえているのが、今でもここにいる理由なんだと思う。




オールプレスでコーヒーを焙煎するということは、ペターにとってどういうことなんだと思う?
すごくいいのは、自分のエゴを手放せるってことかな(笑)。自分のカフェを運営することは、ある意味で自分のエゴでもある。そこは自分の世界だからね。でもここでは、僕はオールプレスという大きなチームの一員で、ブランドの一部なんだ。僕の気分で「今日のオールプレス ブレンドはこんな味にしよう」なんて勝手に決められない。世界中で共有しているプロファイル(風味の基準)があるからね。
でも、それがまたすごく心地いいんだ。いつも同じ風味になるように焙煎しているから、一見シンプルに見えるかもしれないけど、特に東京は季節の移り変わりが激しいから、焙煎は実はすごく難しくて、夏と冬じゃ焙煎の仕方が全然違うし、今みたいな梅雨の真っ只中だと午前と午後だけでも変わったりする。だから、決して単純な作業の繰り返しじゃない。同じコーヒーを何度も何度も焙煎しているけれど、一日の中でも、一年を通しても、常にやり方が変化しているんだ。この変化に合わせながら、いつもと変わらない風味を引き出していく。それがこの仕事の面白さだよ。


東京ロースタリーがクローズして御代田に移転するって知ったときはどう感じた?
寂しいという気持ちは全然ないよ。ここは役割を果たしたんだと思う。次はすごく綺麗なロースタリーに移るし、絶対に素晴らしい場所になるよ。本当に美しくなる。それと、ありがたいことにコーヒーの焙煎量がすごく増えて、ここの規模じゃもう手狭になってきてたんだ。次のロースタリーはもっと大きくなるし、環境も良くなる。だから、僕たちが大切にしている「いつでも変わらないコーヒー」を、これまで以上に安定して、より良い形で届けられるようになるよ。
それに僕自身は、あんまり過去を懐かしむタイプでもないし、前を向くのが好きなんだ。この先のオールプレスは良くなる未来しかないよ。もちろん、ここが恋しくなることはあるだろうけどね。このロースタリーは、僕にとって第二の実家みたいな存在だったから。東京にいる外国人として、心の拠り所というか、安全なアンカーみたいな場所だった。でも、もう次に進む時が来たんだよ。
御代田に移転したあとのオールプレスに期待していることは?新しく何ができるようになると思う?
まずは、これからも成長し続けられたらいいなと思ってるよ。御代田ではロケーションがガラッと変わるよね。もちろんロースタリー自体もそうだけど、標高が高くて、もっと涼しい気候の場所に引っ越すから、天候の激しい変化や移り変わりが今ほど焙煎に大きな影響を与えなくなると思う。
だから一年を通して、どんな季節でも、僕たちが目指す風味のコーヒーを焙煎やすくなるはずなんだ。そこが一番大きいかな。クオリティももっと安定するようになると思うよ。
これまでオールプレスに来てくれたカフェのお客さんやホールセールのパートナーに何を伝えたい? 彼らとの間で特に印象に残っている思い出とかはある?
まずは、これまで一緒に歩んでくれてありがとう。それから、心配しないでって伝えたい。オールプレスは、これからもっと良くなる一方だから。コーヒーの風味は変わらないし、むしろ今より美味しくなるよ。
思い出といえば、フルタイムで焙煎を始める前にバリスタトレーニングの仕事をしていたんだけど、日本中をあちこち旅してホールセールのパートナーカフェを巡ったんだよね。特にスキーリゾートのエリアにはよく行っていて、そこで僕たちのコーヒーがどんな風にみんなに喜んでもらえているかを見ることができたのがすごく嬉しかったんだ。東京で焙煎したコーヒーが、遠く離れた地でこんなに喜ばれているんだっていうのを感じられるのは本当に最高だったよ。自分のカフェをやっていても思うけど、すべてがつながっているんだよね。それに、つながっているのは日本国内だけじゃない。イギリス、オーストラリア、シンガポール、それにニュージーランドまでつながっているんだから。ここにいると、世界がなんだかすごく小さく感じられるんだ。
チームのみんなに伝えたいことやシェアしたいことはある?
創業当時のオリジナルメンバーは、もう僕の他には一人しか残っていないんだ。ちょうどこの前、これまでにどれだけの人が関わってくれたか数えてたんだけど、とにかくみんなには、本当にありがとうと伝えたい。みんながいなかったら、絶対に12年もここにいられなかった。さっきも言ったけど、ここは僕の第二の実家で、それは他の誰でもない、みんなのおかげなんだ。マネジメント層だけじゃなくて、バリスタとして働いてくれたスタッフも含めてね。これは終わりじゃないよ。ただの始まり。新しいスタートなんだ。
Our Next Chapter
東京ロースタリーで積み重ねてきた12年間を胸に、長野県・御代田町の新ロースタリーへ。 清澄白河の街から始まったスペシャルティコーヒーブランドとしての私たちの旅は、多くのカスタマーやコミュニティ、チームに支えられながら、次の章へと進んでいきます。
たとえ拠点が変わっても、私たちが大切にするものは変わりません。今日飲むコーヒーが、昨日のコーヒーと同じであること。いつ飲んでも変わらない最高の一杯を、この先もすべての人にお届けすることを約束します。


